Designing Proteins

タンパク質をデザインする

タンパク質は遺伝子にコードされ、生体内の化学反応や細胞の構築を担う実働分子です。これを自在にデザインできれば様々な応用が可能になります。

古代タンパク質を再現する
生物同様にタンパク質も37億年かけて進化(自然のタンパク質デザイン・工学)してきました。そこで、自然のタンパク質デザインをリバースエンジニアリングするために、古代タンパク質の再現実験に取り組んでいます。
これまで古代の生物の姿は化石でしか知ることはできず、失われた遺伝子を解明する手段はありませんでしたが、情報生物学の発展により「古代遺伝子・タンパク質を計算で再現する」ことが可能になりました(参考:生物物理HP)

この研究室では、アナゴの体表粘液に存在する生体防御タンパク質コンジェリンの古代タンパク質を分子系統樹にもとづいた計算により再現しました。その結果、コンジェリンの相同タンパク質であるコンジェリンIとコンジェリンIIの間でβ-ストランドの交換によるフォールド(立体構造)進化が起こり、構造が高度に安定化されたことを証明しました(東北大学との共同研究 Structure 1999, JMB 2002など)。

クジラはカバの親戚で、一旦陸上生活を始めたのちに海洋に再適応したことはよく知られています。海洋適応のためにクジラの遺伝子には多くの変異が蓄積しましたが、特に筋肉などで酸素を蓄積するタンパク質ミオグロビンは、高濃度に溶解できるように進化しました。この研究室ではクジラの陸上祖先とされるPakicetus、海洋適応した最初の祖先とされるBasilosaurusの祖先型ミオグロビンを再現することで、この海洋適応が2段階(沈殿剤耐性の強化 –> 構造安定性の強化)で起こったことを実験的に解明しました(富山県立大・岡山大・立命館大との共同研究。 Sci Rep 2018 プレスリリース)。

ホタルの発色はタンパク質ルシフェラーゼが発光分子ルシフェリンの反応を触媒する過程で発生します。現在のホタルはルシフェラーゼの進化により赤~緑の様々な色で発光しますが、ホタルの祖先のルシフェラーゼを再現することで、最初のホタルの発光色が緑であり、おそらく捕食者に対する警告として機能していたことを示しました(鹿児島大学、中部大学、名古屋大学との共同研究)。

医療・産業応用のためのタンパク質デザイン
この研究室ではタンパク質を医療や産業に応用するためのタンパク質工学も研究しています。最近の成果としては、遺伝子(DNA)のミスマッチ(DNA2重らせんでA-TまたはG-Cの塩基対になっていない損傷したDNA)を認識し切断する酵素として新発見された、古細菌由来のEndoMS/NucSを持ちいて、がんなどの遺伝病の原因になるDNAの変異がサンプル中に存在するかどうかをPCRにより迅速・簡単に検出する方法を、タカラバイオとの共同研究で開発しています(Structure 2016, NAR 2016, 特許2017, 特許2020、タカラバイオHP)。